カナダのビリギャル 最終話
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どうもユウイチ(@yuichiho)です!
みなさん、ビリギャルはご存知でしょうか?
学年ビリの金髪女子高生が慶應義塾大学に合格するまでの奇跡を描いた大ヒット作です。
私がカナダで日本語教師をしていた時、ひとりのビリギャル、Jと出会いました。
そんな私と彼女の物語を数回に分けて書き綴ってきましたが今回が最終話です。
第一話はこちら▼
第二話はこちら▼
最終話 彼女の夢
自分に自信が無く、勉強するやる気も持っていなかったJが少しずつ変わり始めた。
積極的にノートを取っていく。
Jの家庭教師を始めて、2ヶ月ぐらいで彼女の日本語能力は飛躍的に向上していた。
Jの好きな日本食や旅行を題材にして、教科書で使われる単語や表現を教えるというやり方がうまくいって良かった。
初めの頃、Jとの会話は、日本語:英語=1:9だった。
それが2ヶ月経つ頃には、日本語:英語=7:3になっていた。
もちろんわかりやすい日本語を使うように徹底はしていたが、それでもこの変化には下を巻いた。
若者の吸収力はこうもすごいのかと教えながら毎回驚嘆する。
「若いだけで価値がある」とはよく聞くけれども、吸収力の速さはその一つと言えるだろう。
いよいよ最終試験が迫る。
最終試験はペーパーテストだけでなく、「面接」があるとのこと。
ペーパーテストに関しては、最終試験前の中間テストや小テストでコンスタントに平均点を取れるようになっていたのでなんとか大丈夫だろうと思っていたが、ここに来て面接があるとは。
どういう内容の面接か確認したところ、
教授が当日指示する日本企業に面接を受けに来たという程で、面接を日本語でやるそうだ。
さすがカナダトップクラスの大学。
外国語で会話することだけでも難しいのに、
企業面接という形で試験してくるとは。
「もう無理です」
明らかにうなだれるJだったが、自分には勝算があった。
まず、面接なんてものは定型的なやりとりしかしない。
日本の面接でもそうだし、自分がカナダの企業で面接を受けたときもそうだった。
・自己紹介
・志望理由
・なぜ日本で(カナダで)働きたいのか
・長所・短所
・自分の強みをどうその会社に活かしたいか=なぜ自分を採用すべきか
ざっとこんなところだ。
「基本的なことしか聞かないよ」と教授に言われたとJから聞いていたので、間違いなくこの点を押さえていれば問題ない。
問題は、志望理由のところ。
当日までどの会社か知らされないのはなかなか厳しいが、それでも自分は大丈夫だと思っていた。
それは、他の生徒と比べても、Jが日本に詳しかったことだ。
食と旅行だけかと思いきや、彼女は日本企業をいくつも知っていた。
いつも授業終わりにつけていたノートを見返すと、
「前乗っていた車がトヨタで、今はホンダで〜日本車以外乗らない」
「醤油はキッコーマンを使っている」
そうメモ書きしていた。
日本の車メーカーと食メーカーを元々知っている。
こんな武器はない。
作戦としては、車メーカーと食メーカーの共通点を探すこと。
それを覚えてしまえばいい。
「A社の強みは〜で」の「〜」の部分を日系企業に当てはまる共通項を当てはまればいい。
あとはA社がB社になるかC社になるかだけの話だ。
面接も企業毎の志望動機どうこうではなく、日本語でコミュニケーションがちゃんと取れるかをみているのでそこまでちゃんと答える必要はない。
面接=難しい、できない、無理、もう終わったと考えている彼女のブロックを外すために、面接は定型的なやりとりしかないこと、共通項を見つけてそれを暗記すればいいことをJに伝えた。
彼女の表情は曇ったままだが、「それならやってみる」と前を向いて対策に乗り出した。
もちろん答えは教えない。
全て自分で考えさせる。
今になって、自分がやっていた教え方は、コーチングに似ていると思う。
「日本語がうまくなってどんなことがしたい?」
「なぜそう思う?」
「面接官だったら何を聞きたいと思う?」
あらゆる角度から質問を投げかけて、考え、気づかせる。
そして、本人は、自らの気づきを経て、行動に移す。
そういう意味では、教えてきた生徒達は、コーチングを仕事としている現在の自分の初めてのクライアントだったのかもしれない。
中国、カナダで育って来たJにとって、自分で考えて、自分の意見を言うことは当たり前の環境だったので、私からの問いかけにしっかり答えていた。
ちなみに、カナダでは、テストで100点取っても100%出席していても成績は100点にならない。
授業中に発言したり、積極的な参加をしなければ、どれだけテストで良い点を取っても授業を休まなかったとしても、100点はつかない。
正解主義の教育とは違う。
面接のための文章を作成した後は、ひたすら面接の練習。
カフェのど真ん中で面接の練習をする二人がおもしろいのだろうか、ちょこちょこ「君たちは何をやってるんだ?」と笑顔で話しかけて来るカナダ人達。
和気藹々とした雰囲気の中で何度も対策をした。
教え始めた当初からそうしているが、徹底的に彼女を肯定して、褒めまくった。
試験前日、Jからテキストメッセージが入った。
「先生のためにも頑張ります」
彼女はもう自分の想いだけでなく、私の想いまでも背負っていた。
遅刻ばっかりして、勉強にも全然やる気なくて、赤点ばっかり取っていた子がここまで成長するとは。
ただただ、合格することを祈った。
試験が終わって数日後。
いつものカフェで会うことになった。
私が日本に帰国する数日前だった。
時間通りにやって来たJ。
「たぶん大丈夫!!」
笑顔でそう言った。
基本的に自信の無い彼女が「大丈夫」という言葉を使う時は自信がある時だ。
もちろん、単位が取れるかどうかは最後になってみないとわからないものの、ほっと胸をなでおろした。
「たぶん」なんて言葉も一丁前に使えるようになったのも嬉しかった。
最初に会った時はこうだったよね、ああだったよね、という想い出に浸る。
「先生が私を信じて、褒めてくれたことが何よりも嬉しかった。それがやる気になった。ありがとう。」
何度もそう言ってくれた。
そして、いよいよ別れの時が迫る。
雨が降る外に出た。
別れ際、彼女が恥ずかしそうにこう言った。
「先生、私日本に留学したい。先生と同じ立命館大学に。」
嬉しくて、泣きそうになった。
「そうか〜絶対行けるで!関西にいるからいつでも連絡して!」
「うん、先生ほんとうにありがとう!」
後日彼女から単位を無事取得できたと連絡があった。
単位が取れたどうかよりも彼女が新しい夢を持ったことの方が喜びだった。
彼女が日本に来る時、
この記事を読ませよう。
読めなくても間違えても
褒めてあげようと思う。
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【あとがき】
今回の話、いかがでしたでしょうか?
3回にもわたる長文にお付き合いくださりありがとうございました。
実は「カナダのビリギャル」というタイトルで文章を書いていたにも関わらず、「ビリギャル」を読んだことも映画を見たこともありませんでしたw
最終話を書き終えて、第一話をアップした時に、このブログを読んだ友人が「ビリギャルめっちゃ良かったよ」と教えてくれたので、慌てて読みました。
感想。
めっちゃ泣けるw
自分とJのストーリーと重なる部分もあって、一気に読み進めました。
オススメです。
今は大学生や高校生、自分より年下の世代と関わる機会がたくさんあるんですが、彼らから学ぶことばかりです。
Jからも一言では言い表せないことを学びました。
彼らから勉強しながら、若者の可能性を伸ばすことが先に生まれた世代の使命だと思っています。
この記事が誰かの何かの役に立てば幸いです。
ほなまた!
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